Day213 Parallel Side Story Part.1

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Day213 2014.6.9 ローマ三度5日目


いつからだろうか。


みんなが向かう、幸せの光が無機質で、作られた人工的な光だと気付いたのは。


俺が居る、この大きな流れは正しい方向に向かっているのか。


本当に正しいのか、疑問に思ったのは。




流れの中で立ち止まり、後ろに居た人たちが自分を追い越し、先の方へ進んで行き…いや、流されて行ったと言うべきか…1人、流れの真ん中に取り残されていき、自分が立っている場所がドコなのか分からなくなった。




俺はドコにいるんだ…



いつしか、周りには暗闇が広がり、視界が狭くなっていった。


音も上手く聞こえない。


呼吸もまるで鉛でも吸っているかのように空気が重く、息が出来ない。



生きているのか死んでいるのか。



それすらも分からなくなってきた。




ただ、眠れば朝が来て夜が来る。

夜が来て、朝が来る。




その感覚すらも朧げで、立ち上がろうとすれば目眩がする。



どっちが上でどっちが下か。



空は上にあるはずで、地面は下にあるはず。



そんな当たり前、当然であるハズのコトが良く分からない。



右に振り向こうと思いながらも、気付いた時には目の前に地面があった。




上手く立ちあがるコトも出来ない。



ぶつけた額の角に痛みを感じる。




痛みを感じるなら、きっと俺は生きているのだろう。







立ち止まった大きな流れの中では、流れそのもの、流れ自体は見えない。


それでも周りに人が居るのは確かだ。


1人、また1人と俺の横を通り過ぎていく。




再び暗闇が俺を襲った。




周りには俺が見えるのか、俺の発する声は聞こえているのか。



分からない。



周りに居る人間には俺の姿が見えるのか、俺を感じるのか。


そして、彼らが見る俺は俺なのか。


そして、それは本当の俺なのか。




空気が少しずつ重くなり、身体にまとわりついてくる。



息をするのが苦しくなってきた。


この苦しみに意味はあるのか。


苦しみの先には別の光があるのか。



何も聞こえない、自分が発しているであろう言葉さえも。



感覚が少しずつ消えていく。



指先から徐々に身体の中心を目がけて、その失うという感覚が上ってくる。




無。




感覚を失った俺の身体はただの肉の塊。




考えるコトも出来ない。




それでも、微かに息をして、心臓は自動的に動いている。



俺はまだ生きている。






ココは地上か地下なのか。




暗く、ドコまでも続いているような空間の中で、目を凝らすと遠くに大きな台地のような物が見える……気がした。



微かに明りが見える。



台地の遥か向こうに沈みゆく太陽がそれを影にしていた。


あそこに行けば、今居る場所が見えるかもしれない。




再び歩き出した。



そこには何も無いかもしれない。



それでも、このまま此処で力尽きるよりはマシだろう。



力の入らない足で踏ん張って歩いた。


段々と影の色が濃くなっていく。




台地には階段があった。


階段と言っても、自分の背丈と同じくらいの段差。



十年、いや何百年と堆積して固まって出来た土を切り出した階段。



これを乗り越えれば、上に辿り着くのだろう。


階段と言うよりも壁、それをよじ登り、1つずつ上っていく。



1段上る度に息が切れ、身体に力が入らなくなる。




あと1つ、あと1つ…




1段ずつ進んでいく。





もう何段上ったのだろう。




このまま頂上には辿り着かないのではないか……




カラカラっと軽い音が聞こえたと同時にに自分の身体が宙に浮くのを感じた。



その直後に鈍い痛みが背中から四肢へ駆けていった。




手をかけていた部分が崩れ、そのまま地面に放り出されてしまった。



濃度を増したビロードのような空を仰ぎながら、痛みが治まるのを待った。





もうこれ以上進めない。





微かに照らしていた光は、もうとっくに消えていた。





もうダメだ。





再び漆黒の闇に変わってしまった空間をぼんやりと眺めた。





もう、このままで良い。


先に進む必要は無い。


理由も無い。



自然と瞼が閉じていった。







再び目を開けると、そこは室内のようだった。


ただただ広い空間の中に取り残されているようだった。


目を開けているはずだけど、何も見えない。


段々と目が慣れてくると、だだっ広い部屋の中に無数のドアが並んでいた。


遠くの方に微かだが、灯りが見える。


そのおかげで部屋の輪郭が分かった。



光は不定期に揺らめいている。


有機的な灯り。


ロウソクだろうか。




手前のドアから1つずつドアノブに手を掛け、開けようとするが、鍵が掛かっているようで開かない。




部屋の輪郭に沿って、ぐるりと半周した所でようやく1つのドアが開いた。


小さな部屋。


中はカビ臭く、1人か2人用の小さな机とイスが2脚あるだけ。



何も無いのか…



ドアノブから手を離し、背を向けた瞬間に部屋の中から何かが動くような音が聞こえた。



「誰か居るのか??」



人の物音かも分からないのに、咄嗟に声が出た。




……………





気のせいか。。



再び背を向けると、また物音という程でも無い、何か繊維が擦れるような微かな音が聞こえた。




気のせいじゃない、誰か居る。




暗い部屋の中を目を凝らしてみると、部屋の隅に1人の男が立っていた。


「誰何だ、お前は!?」

「お前こそ、此処で何をしている?」


静かだが、男の低く唸るような声が返ってきた。


「そんなコトはどうだって良い。お前は誰なんだ。」

「それこそどうでも良い。此処で何をしているんだ?」

「俺は……」

「此処で何をしているかが重要なんだ。答えろ。」

「俺は……」


そうだ、俺は此処で何をしているんだ??


「分からないのか。」

男はいつの間にか2脚ある内の1脚に腰をかけていた。


「教えてくれ、此処がドコなのか…それが重要で無いなら、俺は此処で何をしているんだ??」

「それは自分自身に聞いた方が良いんじゃないのか??」

「う………」



言い返す言葉が見つからず、無理矢理発しようとした言葉も喉の辺りで詰まってしまった。



「俺の事や此処についての話はどうでも良いんだ。まぁ、座ったらどうだ。」


男の勧められるままに椅子に腰掛けた。


近付くまで気付かなかったが、男から漂ってくる獣のような臭いが鼻を突いた。


「何かを探しているのか??」

「……分からない………」

「そうか…」


机の上にあった燭台に灯りが点っていた。

かろうじて、男の顔の輪郭が分かる程の弱い灯り。

机の上に投げ出された男の手には傷が幾つもあった。



なぜ俺は此処に居て、何をしようとしているんだ…何回も何回もその自分に対する疑問が頭の中を駆け巡っていく。


何度も何度も……


しかし、何度自問しようが答えと呼べるような物は出てこなかった。





しばらくの無言の後、口を開いた。




「分からないんだ…気付いたら此処に居た。ドアがたくさんあって、それを1つずつ開けようとして此処が開いた。それだけだ。何のためにやったのかも分からない。」

「そうか。その前は?」

「流れの中に居た。光の方向に向かっていく流れの中に。」

「そうか、それで立ち止まって歩く方向を変えたのか。」

「なぜ、それを知っている??見ていたのか??」

「いや、見ていたわけじゃないが、分かる。何となくだがな。」

「他の部屋にも人は居るのか??」

「居ると言えば居る。居ないと言えば居ない。」

「どういうコトだ??」

「重要なコトじゃないさ。あまり質問ばかりすると答えるのをやめるぞ。」

「……分かった……」


随分と高圧的に言ってくるヤツだ…でも、コイツを逃したら何も手がかりが掴めない。


「重要なのは、お前がドコに向かいたいかだ。」

「ドコに…」

「分かるか??お前がその流れの中で疑問を持ち、立ち止まり、歩く方向を変えた。そこに理由があるはずだ。」

「理由…」

「そう、理由だ。違うか??」



俺がそうした理由…

皆が正しいと信じている光が作り物で人工的なものだと感じたから…

ただそれだけだ。



ありのままを話した。



「そう、それで良いんだ。」

男は身を乗り出し、俺に顔を近付けて、そう言った。


髭で覆われた顔はドコかで見たコトのあるような顔だったが、思い出せなかった。


男はそのまま立ち上がり、部屋の奥にあったもう1つのドアに手をかけた。


「待て!!ドコへ行く??お前は誰なんだ??」

「あまり質問はするなと言ったろう??」


男は背中越しに俺に向かって放った。


少しの沈黙の後、振り返った男がこう言った。


「俺はお前だ。」

「何を言ってるんだ??お前が俺??」

「そう、俺はお前で、お前は俺だ。ただそれだけだ。」

「待ってくれ!!」


慌てて立ち上がり、ドアまで駆け寄ったが男は不可解な言葉だけを残して、ドアの向こうに消えていった。



すぐにドアを開けたが、男の姿はもう無かった。



そこにあるのは、星が散りばめられた夜空と広大な大地があるだけだった。



ちくしょう……



部屋の中に戻ろうとドアノブに手を掛けるが、もうドアが開くコトは無かった。



どうすれば良いんだよ。。



アイツが俺だと??

俺がアイツ??



意味が分からない。。



俺は俺のハズだ。

アイツが俺であるハズが無い。



また当ても無くこの広い場所を彷徨わなければならないのか。

意味不明な言葉と共に、その事実が不安となって俺を襲った。




遠くの方にまた明りが見えた。


地面から空に上るようにドーム状に広がっている。



人工的な明りではあるが、今度は無数の光が集まって輝いている。



街だろうか…



あそこに行けば、また何か分かるのかも知れない。



男の言葉を反芻しながら歩いた。


『俺はお前だ。』

『そう、俺はお前で、お前は俺だ。ただそれだけだ。』



その言葉の意味を考えている間は不思議と疲れを感じなかった。


放射状に広がって消えていく明りの方向に向かって、ひたすら歩いた。




ふとした瞬間に後ろに気配を感じた。


誰だ!?


振り返ってみるが、そこには誰も居なかった。

ただ、今まで歩いてきた足跡が少しだけ残っているように見えた。



その足跡も強い風が吹くと消えてしまった。



再び、男の言葉を思い出しながら、足を進めた。



俺はココに居る。

俺は俺でしかない。

アイツが俺なワケが無い。



俺は俺だ。

To Be Continued →

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