Day187 売人との契約〜俺は人間をやめるぞ〜

Day187 2014.5.14 ローマ再び26日目　

路上で必死になって、掻き集めたコインを握り締めてバスに乗り込んだ。

売人との待ち合わせは、テルミニ駅になっている。

下手なものを売りつけられないためにも、こちらも気合が入る。

約束の地、テルミニ駅に到着。

売人との待ち合せ場所、マクドナルドの前で売人の姿を探すがなかなか姿を現さなかった。

そこにKさんがやってきた。

「待ち合わせ場所が変わった。急いで行こう。ニー」

「待ち合わせ場所変わったんですか？それって怪しくないですか？？もう下手なモノ掴まされたくないですよ。」

「とにかく、急ごう！ニー」

「向こうから急に変更してきたんだから急ぐ必要は無いですよ。こういうときは相手のペースにハマったら…」

と言いつつも指定された場所に向かった。

テルミニ駅から一駅ほど離れた指定の場所に着くと、そこには1人の男がいた。

元からなのか日焼けしたからなのかは分からないが、浅黒い肌の黒い男が立っていた。

「あの人あやしくないですか？？」

「想像してたのと違うね。ちょっと怪しいね。ニー」

「今回は絶対に下手なモノ掴まされたくないですからね！それぞれ目線は違うところにお願いします！」

横断歩道を渡り、男の下へ向かった。

「やあ、例のブツだ。」

「先にチェックさせてもらっていいか？？」

「構わない、チェックしてくれ。」

入れ物から中身を出し、入念に細部までチェックした。

チェックの結果、変なト所は見当たらない。恐らく上物のようだ。

「オーケー、成立だ。」

ギターケースに忍ばせておいた小銭を売人に渡す。

「おい、何だコレは？？」

「約束の金だ。340(ユーロ)キッチリある。」

「ふん…確かに。」

半ば呆れたような顔をしていたが、自称軍人の男ほキッチリと金を納め、雑踏の中に消えていった。

遂に手に入れたぞッ…！

もう、こんな不便な世界に興味は無いッ‼︎

俺はこれを使って新しい世界を見るんだッ‼︎

今まで聞こえなかった音楽を聴いて、見れなかった映像を見て…

そして、人間を超越するッ‼︎

俺はアナログ人間をやめるぞーーッ‼︎

フハハハハハーーッッ‼︎

iPhone5ゲットだーッ‼︎

しかもSIMフリーでなァーーーッ‼︎

コレで俺もデジタル人間に戻れるぞー！

てか、久しぶり過ぎて使いこなせる自信がないィィーッ！！

「早速無くさないでよ。」ｼｬﾘーﾝ

「今回はもう無くしませんよ！首からぶら下げるか、ヒモでくっつけますよ！」

「使ってて何ごとも無ければいいね。ニー」

「そうですね、そこは個人売買なんで不安ですけど。」

今回はsubito.itというサイトを通じて買った。

このサイトは個人間の物の売買をする場所だ。

直接やりとりをするので、たまに詐欺まがいの事案があるのが心配だ。

今回みたいに直接やりとりが出来ればイイのだが、現金を先に送れと言う人も何人かいたのでそれは断った。

「それじゃ先に行ってるね。ニー」

「わかりました、トラステヴェレで！」

久しぶりに持つiPhoneにそわそわしながらトラステヴェレへ向かった。

これでまた残高ゼロ。

ゼロはスタート。

ゼロからのスタート、稼げるだけ稼ぐぞ。

雑記

日本にいる時は仕事柄、最新のデバイスをいくつも持って活動していた。
パソコン、iPad、iPhone、Android…数々の電子機器を持って、あれこれとやっていた。

デジタル社会の現代で、これらを持たずに生活するコトは不便極まりない。

１度でも、その恩恵を受けてしまったのなら、尚更そこから抜け出すコトは難しい。

どこの世界を見てもみんな、中毒のようにスマホをいじり、ネット社会との接点を常に持っている。

取り憑かれたように皆、手の平に収まった四角い画面を見ている。

本当に麻薬のよう。

多くの知識や情報、エンターテイメントがそこに詰まっている。

この旅でiPad、iPhone２台、iPod touchを手放して、宿にいる時以外ほぼアナログ生活。

紙とペン、と紙の地図を使って生活をしていた。

一旦、街へ出ればデジタル社会から切り離され、15年前だったら普通の生活をしていた。

前述したように、１度受けてしまった恩恵から離れた故の不便に感じる生活を送るコトになってしまった。

スマホがあれば10秒で済む情報も３時間かけて手に入れるコトもしばしばあった。

しかし、そこには不便さ故に生まれるモノがあった。

分からないコトがあれば人に聞き、そこから生まれるコミュニーケションやスマホの画面ばかり見ていたら見落としていた風景、気付きがそこにはあった。

情報もスマホがあれば、すぐに調べ終わってしまい結果だけが残る。

アナログ生活では、調べる過程で得られる情報もあった。

ネットを使えば、最短最速で結果は得られるが、記憶には残らない。

また同じコトを調べるコトもしばしばあった。

電子書籍もそう。

紙に比べて記憶に残りにくい。

スマホもといネットは、まるで脳みそに付けられた外付けHDDのように感じる。

この生活を続けていれば、脳が萎縮してしまいそうな気さえする。

そんなコトをアナログ生活をしていて思った。

このままデジタル一辺倒な生活をしていれば、人間としての”らしさ”や”機能”を失っていくような気がした。

現代において、デジタル社会から離れるコトはほぼ不可能に近いが、そういった機会を作るコトは重要なコトかもしれない。

チャンスがあったら、やってみて欲しい。

週に１度は全ての電子機器の電源をオフにするコトを習慣にするのもイイかもしれない。

そこから生まれるモノも少なくは無いハズ。

今の社会は便利さを追求する余りに失うモノも多い。

何が本当の豊かさか…

こんな話をしつつ、今回iPhoneを手にしたワケだが、何事もバランスが大事なのは、これまでも言っている通り。

便利さを求めて振り回されるのではなく、使いこなすコトが重要なのだ。

To Be Continued →