Day1200 2017.2.20 ソウル5日目
韓国旅行も残された時間は6時間。
6時間後には空港に向かって電車に乗らねば。
韓国滞在で思いつくコトはすべてやったと思っていたんだけど、思いの外スムーズに今日の行程が進んだおかげで少し時間が出来た。
ならば昨今、日韓で問題になっているアレを見に行ってみるコトにしよう。
それはソウルの日本大使館前にあるという慰安婦像。
ニュースを初めとするメディアが騒いでいる慰安婦問題。
慰安婦像が設置され、その周囲は物々しい雰囲気になっているとは聞くけど、実際のところはどうなのだろう。。
胸の内では、一種の緊張感と好奇心が混じり合っていた。
危険かもしれないとは思いつつも足は大使館に向かっていた。
せめて日が暮れる前までに辿り着いていたいと思い、明洞のロッテヤングプラザ館の前から出ているバスに乗って向かった。
10分ほどバスに揺られていると目に飛び込んできたのは景福宮だった。
そこでバスを降りて、日本大使館へと向かった。
日本大使館は最近移動したらしく、詳しい場所は分からない。
慰安婦像も大使館前に設置されているという情報があるだけ。
しかも、その銅像も1度移動しているとのコトだ。
頼りになるのはiPhoneに入ったグーグルマップだけ。
しかし、頼みの綱のグーグルマップも韓国に入ってからは思うように働いてくれない。
ハングル文字での記載が多く、行き先を入力しても上手く出てこない。
無事に辿り着けるとイイのだけれど。
見れなかったら見れなかったで諦めはつくけれど、せっかく近くまで来たのだから、実際に自分の目でその像とそれを取り巻く環境を見てみたい。
一縷の望みをグーグルマップに託し、バス停から歩いて日本大使館と示されている場所へ向かった。
その場所に辿り着いたのだけれど、慰安婦像らしきものは見当たらない。
建物の周りをグルグルと歩いてみた。
日本大使館周辺には警察の大型車両が数多く停まっていて、その周りには多くの警察官も警護にあたっていた。
5分ほど周囲をさまよっていると、テントと呼ぶにはみすぼらしいビニール製の小屋があった。
そして、その手前に例の慰安婦像があった。
コレがウワサの慰安婦像か。
慰安婦像にはマフラーや帽子などの衣類が着せられていた。
韓国の冬は寒い。
ココに来るまでの間ですら、自分の身体も冷え切っていた。
この少女像が寒くないように…
そういった配慮で訪れる人が少女に着せていったのだろう。
少女像の前に置かれた供物からもそう伺うのは容易かった。
テントの中には何人かの人がいるようだった。
出入り口となる部分に靴が何足か置かれている。
話し声は聞こえるか聞こえないかの音量で何を言っているか分からなかった。
きっと、彼らはこの慰安婦像を守るためにココに常駐しているのだろう。
24時間体制でいるのか、どういった具合でココに滞在しているかまでは予測が出来なかった。
中に居る人に話しを伺おうか…
そう好奇心が疼いてきたけれど、ニュースで流れている映像が頭をよぎった。
もし、過激な団体だったら、どうしよう。。
オレはココに問題を持ち込むために来たワケではないけれど、誤解を与えてしまって良くない方向に話が進んでしまうかもしれない。
それに武闘派の連中だとしたら…
安全なソウルの街だとしても、この今いる場所は100%安全な場所とは言えないデリケートな場所なのだ。。
どうするか…
そう悩みながら像の後ろに佇んでいると若い2人組の女性がやってきた。
2〜3メートルほど後ろに下がり、彼女たちの様子を伺った。
彼女たちはカバンの中から、お菓子を取り出し少女像の前に置いた。
そして、黄色いリボンのキーホルダーを少女像に取り付け、手を合わせた。
そして、オレのコトを気にするコトもなくテントの向こう側にある署名台へと向かって署名をしていた。
彼女たちに話を聞くべきか…
どういう意図で少女像に手を合わせたのか、ココには頻繁に来るのか、この問題に対してどう感じているのか…
聞くべきか、このまま何事もなかったとして終わらせるか…
すると、次は初老の男性がやってきて写真を数枚撮って去っていった。
それと入れ替わりで、次は3人組の女性がやってきて、また黄色いリボンのキーホルダーを少女像に取り付け、写真を撮って去っていった。
観光地の1つのような感覚で来ているのだろうか。
そこまで深刻に考えているような雰囲気は、この男性と女性たちからは感じられなかった。
何も出来ずに立ちすくんでいると最初の若い女性2人が近寄ってきた。
何をされるか分からず、身構えてしまった。
すると、彼女から何かを手渡された。
それはホッカイロだった。
「あ、ありがとう!!ちょっと待って!!」
咄嗟に声をかけてしまった。
どうしよう、何から聞けばイイんだ??
「ちょっとだけ話を聞かせてもらってもイイかな??」
「イイですけど…」
彼女たちは17歳の高校生。
英語はあまり得意ではないみたいで、やり取りにはグーグル翻訳や身振り手振りを交えて意思の疎通を図ったけれど、ところどころ理解できない部分があった。
「ココにはよく来るの??」
「これが2回目かな。」
「たくさんの人がココに来て、お供え物をしたりお祈りをしたりしていくけど、あなたたちはどうしてお祈りしたの??」
「私たちと同じくらいの年だったのに、生きたくても生きられなかったから。13の人生が…(何度も聞き直したけど分からず)、ごめんなさいという気持ちで。」
※後日調べてみたところ、黄色のリボンはセウォル号事件への追悼の意が込められているというコトが分かった。彼女たちは慰安婦のコトではなく、セウォル号で命を落とした子たちのコトを言っていたのかもしれない…(2017.11.27追記)
「そうなんだね。ココのテントの人たちは知り合い??どういう人たちなの??」
「中にいる人たちは、この銅像を24時間体制で守ってて、大学生が中心なのかな??呼んできましょうか??」
「大丈夫かな??」
「じゃあ、少し待ってて。」
少女がテントの中の人とやり取りをしてくれて、中から出てきてくれた。
中から出てきたのは21歳の大学生だった。
ただ韓国では、この年では大学ではなく、高校なんだと言っていたが、彼女もまた英語があまり話せなかったので、ところどころ理解できない部分があった。
「ココで24時間守っていると聞いたけれど、ずっとココに駐在しているの??」
「そうよ、24時間体制で誰かしらココにいるわ。交代でね。」
「ボランティアというか、学校のグループで自発的にやっているの??」
「そうね、基本的に学生が中心でココにいるわ。」
「この像を守っていると言ったけれど、何から守っているの??」
「アベよ、アベ。」
「安倍首相か…」
「そうよ、彼が撤去しようとしてるから、そうさせないためにね。」
「彼は力づくで撤去はしないと思うんだけどなぁ…今までにそういうコトはあった??」
「そうよ、1度場所を移動したわ。それに襲おうとする連中もいるの。」
「本当に??」
「そうよ、これまでも2度襲われてるわ。このキズを見て。」
そう言って、慰安婦像に被せられていたニット帽を丁寧に外した。
確かに2ヶ所、何か固いもので殴りつけたような跡があった。
「確かにココとココに跡が残ってるね。。」
「そうなの、中にはこういった野蛮な行動をする輩がいるの。」
「それって日本人がやったの??日本人でココまで来て過激な行動をする人がいるとは…」
「これは…韓国人よ。。右翼の連中。」
「あぁ…右翼のね。。」
その答えを聞いて、正直に言って胸の中に安堵の気持ちが広がった。
日本人の仕業だとしたら、恥ずかしい行為だ。
韓国国内の人間の仕業…きっと若い連中か極端な右翼の人間の仕業なのだろう。
ニット帽をまた丁寧に少女像に被せて、彼女は続けた。
「悲しいコトね。自国の人間がこういう行動を取るのは。」
「そうだね。こういった問題というのは、とても敏感な問題だと思う。この問題に対して、自分たちがどれだけ理解しているのか、正直に言って自分には分からない。今、韓国と日本の間に問題があるのは間違いないコトだね。」
「そうね、悲しいけれど。」
「韓国と日本の問題はきっと政治レベルの問題で、個人レベルで見れば問題ではないと思うんだ。世界の色んな国に行って、たくさんの韓国人に会ったけれど、彼らはとても優しく、かけがえのない友人たちだ。自分の親しい友人も韓国人なんだ。」
「そうね、私も優しい日本人をたくさん知っている。」
「まだ自分たちは若い。君たちは17歳、君は21歳。まだまだ未来を変えていくコトが出来ると思うんだ。これからは過去から学んだコトを活かして、一緒に日本と韓国の良い関係性を、未来を作っていけたらと思うんだ。」
「え〜と…何て言うんだっけ??そうだ、ファイティン!!」
「え、ファイティンじゃ戦っちゃうよ!!」
「日本語で頑張ろうはファイティンじゃないの??」
「頑張ろう…かな??あはは。」
「ガンバロー!!」
「寒い中、本当にありがとう!!貴重な話が聞けたよ!!ホッカイロもありがとう!!」
大学生の彼女は再びテントの中に、高校生たちは帰路へついた。
2015年に慰安婦問題は”最終かつ不可逆的に解決”ということで日韓合意で落ち着いたはず。
しかし、今もなお慰安婦問題の火種は民間レベルではくすぶっているようだ。
個人的な観点から言えば、もう過去の話。
大事なコトは過去ではなく未来、これからのコトだと思う。
いつまでも負の歴史を引きずっていては、前には進めない。
韓国政府に支払われた10億円というカタチで納得してもらい清算していただければと思う。
もし、そうでなければいつまでも先に進むコトはできず、ベトナム戦争時に韓国軍がベトナム人女性たちに犯した罪に対して言及されるコトになっていくだろう。
デリケートな問題であるし、何を言っても綺麗事になってしまうけど…
1つだけ言うのであれば、オレたちは過去に生きてるんじゃなくて、現在を未来を生きるんだ。
早くすべての人が手を取り合って笑い合えるとイイんだけどなぁ。
この少女像が見つめる先には何があるのだろうか。
明るい未来であるコトを願うばかりだ。
To Be Continued →
慰安婦像に行った時の様子をyoutubeにアップしました!!
実際の様子をご覧ください。
慰安婦像
住所: 16-13 Junghak-dong Jongno-gu, Seoul, 大韓民国
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