Day91 思いは思いのままで…なんて、”いいわけ”だ。

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Day91 2014.2.7 ロンドン5日目


遂にこの日がやってきた。


ロンドンに来た最大の目的。



朝からソワソワして落ち着かない…

日記や毎日の作業を終え、早めに仕度を済ませる。



それが、逆に落ち着かない。



一昨日、飲もうと思って買ったビールが手付かずで残っていたので、飲んで気を紛らわすか…


午前中から飲むビール………



悪くない。



周りはホリデイやバカンスで来ている人たちが多いから、朝からビールを飲んでも気にする人は誰もいない。

俺はそんな彼らのようにホリデイやバカンスで旅に出てるワケではないから、ビールの苦みが少々の背徳感のようにも感じた。



2本目の缶を空ける頃には、いつの間にか背徳感は高揚感に変わり、俺の背中を後押ししてくれるような気がした。

ギターを抱え、部屋を出る。





駅でオイスターカードの仕組みに疑念を抱きつつ、電車に乗った。

窓の外には、既に見慣れつつある景色が通り過ぎて行く。




ロンドンに来た最大の目的とは、人と会う事。


2週間前に会ったあの人と会う約束をしている。




“13:00にウェストミンスターの橋の袂で会おう。ビッグベンの下で。”




まるで、小説や映画の中に出てくるようなセリフを自分の口から発した事が、何だか気恥ずかしくて思い出す度に口元が緩んでしまう。


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ロンドンブリッジで乗り換え、13:00ちょうどにウェストミンスター橋にたどり着いた。



橋の上は観光客で溢れ帰り、橋の向こう側を見通すことも出来ない。

歩きながら、観光客の隙間を縫うように約束の相手を探すも見当たらない。



まだ到着してないのか。



無事に会う事が出来るだろうか…


ビッグベンの針が動く度に不安の気持ちも大きくなり、心が焦り始めた。

俺の背中を後押ししてくれていたビールの力は、すっかり影を潜めていた。



これまでに幾人のヒトがこうやって人を待ち、約束の度にこんな思いをしていたのか…と思いを馳せていると探していた姿が目の前に突然現れた。



「元気??」

「おぉ、会えて良かったよ!」

「久しぶりね!」


安堵と緊張、真逆の性質の感情が同時にやってくる中、お互いの身体を抱きしめ合った。




彼女に会うために海を越え、国を越えてロンドンまでやってきた。


ミュンヘンで会ったミリアムに会うために。


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テムズ川沿いを2人で歩きながら、どこか良さそうなお店を探した。


ウェストミンスターやピカデリーの辺りは観光客向けのお店ばかりだから、避けようという事で、ミリアムが見つけてくれたホルボーン駅のすぐ近くにある“THE SHIP TAVERN”というパブに行くコトにした。

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1500年代から続いている店は、レトロな雰囲気と人々がこの店を愛している事がよく伝わってきた。


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注文を済ませ、ようやく落ち着いて会話が出来た。


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「海を越えて会いにきちゃったよ。ミュンヘンで会って、国を越えてロンドンで会うなんて日本人の俺には不思議な感覚だよ。それにしても、ミリアムに会う事が待ち遠しくて、この2週間がとても長く感じたよ。」

「私も。会えて嬉しい。本当に会えるなんて。」



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お酒を飲みながら、2人の時間を、会話を楽しむ。

途中、愉快な隣人のおかげで一層楽しい時間になった。

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しかし、タイムリミットは19:00。


時間は無情なもので、刻々と忍び寄り大切なものを奪っていく。


タイムリミットになる前に言いたいコト…いや、言わなければならないコトがある。




思いは思いのままで…??


そんなのは、只のいいわけだ


思いは伝えなきゃ、そこで終了だよ。




「この2週間、ずっとキミのコトばかり考えてた。頭の中がキミのコトでいっぱいだったんだ。」


意を決して言ってしまった…


「今なら言える。キミが好きだって。今日会って、やっぱりそう思った。でも…俺は旅人……」



“あんたじゃ人を幸せに出来ない。”



そう言われた過去が頭の隅から顔を覗かせ、言葉に詰まってしまった。


乗り越えなきゃ……



「……出来るコトなら、ずっと一緒にいたい。そう思ってる。」





見つめ合う瞳と瞳。





どんな答えが返ってこようと、後悔はしない…

気持ちは伝えないと…!


そうしないと先へ進めない。


自分勝手な意見に聞こえるかもしれないが、この自分の中にある黒い塊を乗り越えるためには必要な事なんだ。




少しの間がどれだけ長く感じたか。





「本当に??嬉しい!3月からミュンヘンで一人暮らしするから、ミュンヘンに戻ってきて。それに4月にはイスラエルのテルアビブに行くし、6月の終わりからは日本。日本はマストよ、一緒に付いてきて!旅人ならドコでも会えるわ!」


彼女の笑った顔を見て、俺も笑った。
彼女の口から、思っていた以上の言葉が聞けて、張り詰めていた心が開放された。


お互いを見つめ合い、クスッと笑った後、自然と唇が重なった。



残りの時間を惜しみながらも、2人の時間を満喫した。



無情にもタイムリミットがやってきてしまい、店を出なくてはならない時間になってしまった。


気付けば店内は満席で立ち飲みの客で埋め尽くされていた。


文字通り、周りが見えなくなるとはこのコトだな。


ミリアムを駅まで送り、ハグをして別れた後はいつものチャイナタウンへ向かった。





今日は金曜日。


どの通りも人で溢れている。


チャイナタウンに向かう途中で車の通らない通りを見つけたので、試しにやってみるが、人が多過ぎて全然立ち止まってくない。

早々に見切りをつけて、チャイナタウンへ。



やはりココは良い。
なじむ、実になじむぞ。。


顔なじみになってきた周りの店舗の人たちもコインを入れてくれる。



4時間ぶっ続けでやって、あがりは52.78ポンド。



やりきった。



疲労感が身体を襲う。

小雨が降る中、駅へ向かった。




数時間前の出来事を、彼女のぬくもりを思い出しながら。




まるで夢だったかのように、遠く感じる。


本当に現実に起きた出来事だったのだろうか。


無かったコトに…なんてならないで欲しい。


これが夢なら醒めてくれるな。




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グリニッジの宿に着くと、バーがクラブと化していた。

さすがのパーティーモンスターの俺も今日ばかりは愛しい時間を噛み締めたくて、そのまま部屋に戻った。


To be continued→

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